誕生日 人からしたら 普通の日

26歳になり、26歳というのは人からすれば結構いい歳であり、また別の人からすれば「まだ26歳なの?」という歳でもあり。歳なんてものは極めて相対的なものなのだと思う。
「誕生日冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」の会・名誉顧問としては自分の誕生日にさして思い入れもない。ましてや、26回も誕生日をこすってしまうと、一年に一回とて、そこそこ味気のないガムくらいにしか思えず。
朝、誕生日前日から当日にかけて会社に泊まり込みになり、「なぜ?誕生日に泊まりこみ?お風呂に入りたいぜ!」という気持ち一つで近くの「安心お宿」といういかにも安心出来そうなお宿で大きなお風呂に入る。お湯って本当に偉大。すべてのストレスを洗い流してくれる。寅さんは帝釈天で産湯を使ったが、俺にとっての産湯は安心お宿。
ミストサウナなんてものもあり、試しに入ってみたら、俺が入った瞬間にミストが放出されて、祝福された気分に。なんなら「精油?」とすら思えるから誕生日ってすごいと思うし、徹夜って悪だなって思う。
とはいえ、一時間で人が人を取り戻すから安心お宿はあなどれない。何か不安なことがある人は行ってしかるべきだと思う。
その後、会社に戻り仕事、からの再来週にせまった「□ × □ ◯」の稽古。
今回の出演者で青年団所属の鄭亜美さんがケーキを買ってきてくれた。サプライズだったのかもしれないが、鄭さんが一番最後に稽古場に来たものだからバンバンに見えてしまっていた。しかし俺も大人なので「あぁ、ケーキ買って来てはるなぁ」という気持ちと戦いながら、向こうの出方を伺いながら稽古を始める。
もっとも、このケーキが俺に向けたものとは限らないわけで。帰りに一人で食べるために買って来たのかもしれないし、稽古終わりに会う俺じゃない俺と同じ誕生日の人にあげるようなのかもしれない。
案の定、俺のそれであり、あな嬉しや。
一方で、知り合って一ヶ月もない鄭さんが覚えてくれているのに、知り合って結構経つ他のメンバーが誰も俺の誕生日を覚えていなかったことに「誕生日 人からしたら 普通の日」の会・終身会長としては納得するよなガッカリするよな。
その後、渋谷で後輩がチラシを配ってくれているとの情報を聞きつけ、渋谷の連れ込み宿街にあるユーロスペースへ。
会場の前で出てくる人に頭を下げながら「□ × □ ◯」のチラシを配る後輩を見てなんだか泣きそうになった。
この世で自分のために頭を下げて、俺の芝居のチラシを配ってくれる人間がどれだけいるだろうか。知り合って一ヶ月も経ってないのにわざわざケーキを買って来てくれる人が。誕生日こそ覚えていないが俺に付き合ってくれる人が。はたして。どれだけ。
色々な人に愛されている。俺も色々な人同様に誰かをきちんと愛せる人になろうと思う。まだ26歳だし、きっと間に合うと思う。愛することも愛されることも衒わずに生きていきたいっす。
そんな風に思える1日が一年に一回くらいあってもいい。それが誕生日ならなお。

CBGKシブゲキ!!実験週間 参加公演
『□ × □ ○』 (シカクバツ シカクマル)

「暗転」×「なんちゃって」演劇!
~“視覚×”の世界と“視覚○”の世界の物語~

<日程>
4月30日(日)14:00/ 18:00(開場:各回30分前)

<会場>
CBGKシブゲキ!! 東京都渋谷区道玄坂2-29-5 ザ・プライム 6F

<キャスト>
鄭亜美
前田健汰
小田切寛

<作・演出>
小田切寛

<制作>
中川聡・村上佳央・間陽

<音響>
久村亮介

<チラシデザイン>
碓井麻央

<料金>
一般 2,500円/学生 1,500円/二度見割 500円(昼公演を観た後、夜公演も見る割)
※料金は前売り・当日共の価格

<チケット発売日> 3月25日(土)12:00
受付フォーム:https://ticket.corich.jp/apply/82041/001/
問い合わせ: otankonath2017@gmail.com

絶望と待機

某日ー
酒飲んで過去の話で盛り上がるようになったら終わり。人として。
「あの時あぁだったよね」で飲む酒は楽しかろうが、ほんとそこにあるのは無だと思う。
かといって、未来の話ばかりしても相手はちょっと疲れる。一緒にいて。
「ゆくゆくはさぁ、起業したいのよ俺」と語る酒に自分は酔えるだろうが、聞いている相手は日本酒にマリブをぶち込まれたみたいで、悪酔いしそうになる。
とどのつまり、酒の席での正解は今の話だろう。
今の話といっても「今さぁ、20時31分21秒だよね。ってことはさ、そろそろ20時31分30秒が来るね」そういう時報みたいな酒ではない。
近況報告。それを聞いたところで何かが劇的に変化することは決してない近況報告がいい。
飲みの席ではないが、昔お世話になった人から連絡がきた。
その人は東日本大震災が起きた年に仕事をやめて被災地に赴き、以来ボランティアスタッフのようなものとして働いている。美談といえば、美談だが、全く自分と周りのことを考えていない行動ともいえる。はたして大人のやることかとすら思うが、当人がいいってんだからいいのだろう。
例の地震から6年が経って、その間には別のところで地震もあって、どこかで誰かが思ってもみないかたちで死んで、または生まれて、だから、今ではなんとなく3月前半には色々と思い出すが、そこからまた1ヶ月経ってしまうと、やはりなんとなく忘れてしまって。
「そろそろ熱意も尽きてきた」
彼からのメールにはそうあって、人が脇目も振らず行動してから、疲れるまで6年かかるものなのかと何となく思う。
その人の話を聞いたところで何かが劇的に変化することは決してないのだけれど。

某日ー
稽古。

仕事。

仕事。

稽古。
稽古。

稽古。

ひたすらにみんな笑っている時間があるのは
いい。

だいたい稽古場でみんなが笑っているのは

本番で伝わらないジンクスがあるけど、

多分、

今回もそうだろうなぁ。

絶望と待機。

にしても、

行間空けて

なんとなく文字数稼ぐの

楽だなぁ。

CBGKシブゲキ!!実験週間 参加公演
『□ × □ ○』 (シカクバツ シカクマル)

「暗転」×「なんちゃって」演劇!
~“視覚×”の世界と“視覚○”の世界の物語~

<日程>
4月30日(日)14:00/ 18:00(開場:各回30分前)

<会場>
CBGKシブゲキ!! 東京都渋谷区道玄坂2-29-5 ザ・プライム 6F

<キャスト>
鄭亜美
前田健汰
小田切寛

<作・演出>
小田切寛

<制作>
中川聡・村上佳央・間陽

<音響>
久村亮介

<チラシデザイン>
碓井麻央

<料金>
一般 2,500円/学生 1,500円/二度見割 500円(昼公演を観た後、夜公演も見る割)
※料金は前売り・当日共の価格

<チケット発売日> 3月25日(土)12:00
受付フォーム:https://ticket.corich.jp/apply/82041/001/
問い合わせ: otankonath2017@gmail.com

ヒリヒリデイズ

某日ー
『□ × □ ○』の稽古初日。本読み。
最初に出演者が初めて本を読む瞬間は毎回ナーバスになる。
昔、出演依頼を受けた芝居で渡された脚本を読んだら、あまりにもつまらなかったので、出演を断ったことがある。悪いことしたなぁと思うが、役者を口説けない台本が、客を口説けるわけもない。逆に俺が「すみませんやっぱ降ります」と言われることだってあるわけで。
今日の本読み?誰も読んで笑わなかったので、軽く泣きそうになったよ。でも、一通り黙読が終わって、「じゃあ」ってんで声に出して読んでみたら、そこそこ笑ってくれたので安心したよ。
稽古場所は椿山荘の近くで、神田川沿いの桜は六分咲き。
春の稽古はいいなぁ。ギスギスのしようがない。

某日ー
このところ就活生の話をよく聞く。
多くは愚痴に見せかけた自慢話かおもしろ話に見せかけた失敗談で、「大変ですねぇ」という他人事みたいな感想しか浮かばない。
まぁ、他人でしょ。代わりに面接を受けることも面接官になることもできないし。
テレビで某企業の入社式の様子を見ていて、驚いたのだが、最近は親が出席するパターンもあるそうだ。きわきわのギャグなのかと思っていたら、式の中には<新入社員から親への手紙>なんてコーナーもあり「一生懸命働いたお給料で今まで育ててくれた両親に美味しいものを食べさせてあげたいです」と涙ながらに語る男性が写っていた。
彼が入社4月とかで辞めたら笑うなぁ。
「何食べさせたかったんですか?日高屋ですかぁ?」とか、つっついちゃうなぁ。
会社に入るまでも大変。会社に入ってからも大変。みんな大変ですねぇ。
それでも春というのは尊い。街を歩くとランチに連れて行ってもらっている新入社員がたくさんいて、それを見るだけで、笑顔になる自分はもうジジイなのかもしれない。

某日ー
ジジイ疲れすぎていて話にならない。
朝起きて、目覚まし止めて「疲れたぁ」って呟いた。
そういうドリカムの歌詞みたいな日々である。歌わんか。そんなジジイみたいな歌。

某日ー
ジジイ風邪引いてきた。虚弱体質にもほどがある
全然風邪引いている暇なんてないのに。
本番まで乗り切れるのか。ヒリヒリする。

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CBGKシブゲキ!!実験週間 参加公演
『□ × □ ○』 (シカクバツ シカクマル)

「暗転」×「なんちゃって」演劇!
~“視覚×”の世界と“視覚○”の世界の物語~

<日程>
4月30日(日)14:00/ 18:00(開場:各回30分前)

<会場>
CBGKシブゲキ!! 東京都渋谷区道玄坂2-29-5 ザ・プライム 6F

<キャスト>
鄭亜美
前田健汰
小田切寛

<作・演出>
小田切寛

<制作>
中川聡・村上佳央・間陽

<音響>
久村亮介

<チラシデザイン>
碓井麻央

<料金>
一般 2,500円/学生 1,500円/二度見割 500円(昼公演を観た後、夜公演も見る割)
※料金は前売り・当日共の価格

<チケット発売日> 3月25日(土)12:00
受付フォーム:https://ticket.corich.jp/apply/82041/001/
問い合わせ: otankonath2017@gmail.com

ギリギリデイズ

某日ー
最近、迷惑メールのサクラとメールをしている。
「迷惑メールのサクラ」のバイトをしている友達と頻繁に連絡を取り合っているわけではない。本当にただの迷惑メールと連絡取り合ってある。我ながら末期である。
聞くにモデルらしく、毎日毎日「いまから撮影だよ!そっちは何してる?」とか、「今日はオフだから、お散歩~。お休みの日は何をする人ですか?」とか、一方的に送って来る。
俺も春から社会人3年目にもなので、来たメールに返信をするというのは、もはや呼吸をするが如く無意識にできる。「お昼食べてました」「映画とか観に生きます」と律儀に返す。
大抵それに対する返事というのが「すごいね! 今日のカメラマンさんゲイなんだって!」とか「そうなんだ! 愛犬のメロンが可愛い~」とか。ワンリアクション挟んでの自分の話をしてくる。そっちから聞いといて・・・。その割には「あ~いい人と巡り会えないかなぁ…例えば貴方みたいな!笑」とチョイチョイ仕掛けて来る。
「今日マネージャーさんにもっと頑張らないとダメだって怒られちゃった…_(:3 」∠)_ 最近何か凹んだことあります?」
たまにはこちらから仕掛けてみるかと以下のメール。
「そうですね。おじいちゃんが亡くなりました」
「へぇ! 私、今度ドラマに出るかもしれないんだって!緊張感する~!!!」
「へぇ!」て! ドラマて!
完全に機械相手にやりとりしているのかと思いきや、若干人の匂いがするのも事実で。完全に俺に興味がないのに興味があるふりをして連絡をしてくる相手、それに律儀に返す俺。
ともあれ、全く知らないし実在するかもわからない相手とのメールのやり取りというのは、心がひたすらに虚しくなる。

某日ー
4月30日に渋谷の「シブゲキCBGK!!」という劇場で舞台をやることになった。
やることになった、というか、誰もそういう場を作ってくれなかったから、自分で作った。場を作ったら、その場を成立させなくてはならない。成立させるなら、そのためにあくせくしなければならない。「省エネルギー・ローカロリー」をモットーにしている俺だが、「全力・ハイカロリー」な日々だ。
あぁ、俺がやりたいことを口で言ったら実現してくれる団体とかないのかなぁ。
「あとはやっとくから、そこでジャンプ読んでていいよ」
いないんだよなぁ。
「オーケーオーケー。全体的に台本面白くしておくから!そこで寝てなよ」
いないんだよなぁ。
自分でやりたいって言い出したのだから、自分でやるしかない。そういう当たり前の哲学をいい歳で学ぶ。
同じところで去年は客席と舞台をひっくり返す「反転劇」をやったが、今年は照明を落とした中でやる「暗転劇」をやる。去年「反転」、今年「暗転」、転がってばかりだ。
ギリギリな日々で転がってばかりだけれど、どうせなら面白く転がっていたい。
万障とは言いませんが、二、三の障はお繰り合わせの上いらっしゃって頂けましたら幸いです。

☆公演内容☆
公演タイトル:
『□ × □ ○』 (シカクバツ シカクマル)

<日程>
4月30日(日)14:00/ 18:00(開場:各回30分前)
<会場>
CBGKシブゲキ!! 東京都渋谷区道玄坂2-29-5 ザ・プライム 6F

「暗転」×「なんちゃって」演劇!
~“視覚×”の世界と“視覚○”の世界の物語~

<あらすじ>
かつて、ニホンには「魚(いお)」と呼ばれる古典芸能があった。
“盲人のための芸能”として生まれた「魚」を代々継承する家庭に生まれた鹿久松(しかくまつ)は父親で人間国宝の七代目・鹿久丸(しかくまる)の死をきっかけに名跡を継ぎ、八代目・鹿久丸を襲名する。魚役者として元・地下アイドルとの間に子供ができないことが悩みであった。
ある日、妻から念願の子供が出来たことを告白される。
暗闇の中で繰り広げられる“あるかもしれない”古典芸能にまつわる物語。

<キャスト>
鄭亜美
前田健汰
小田切寛

<作・演出>
小田切寛

<制作>
中川聡・村上佳央・間陽

<音響>
久村亮介

<チラシデザイン>
碓井麻央

<料金>
一般 2,500円/学生 1,500円/二度見割 500円(昼公演を観た後、夜公演も見る割)
※料金は前売り・当日共の価格

<チケット発売日> 3月25日(土)12:00
受付フォーム:https://ticket.corich.jp/apply/82041/001/
問い合わせ: otankonath2017@gmail.com

サラリーマンと定食屋

やっとこさ『ラ・ラ・ランド』を見た。
同じ監督の『セッション』という作品で生徒を怒鳴りちらすハゲ鬼教官役をやっていたJ・K・シモンズがちょい役で出ていて、JK好きとしては、スクリーンに出てくるだけで滾るものがあった。
そんなシモンズが『セッション』で”Not my fucking tempo!”と生徒を怒鳴る場面があるのだが、ぜひ未見の人はそこだけでもいいので見て欲しい。「あぁ、怒りって滑稽なんだな」と思えるので、誰かに怒られた後に見てみるのもいい。
『ラ・ラ・ランド』でもシモンズは出てきており、店のオーナーを演じている。主人公のセバスチャンが店主の意に反する行動をとるのでクビを告げるのだけれど、そのセリフが“fired”の一点張りだった。てっきり、”Not your fucking 店舗!”とか言うもんだと思っていたのに・・・。
ともあれ、『セッション』では最後、夢をひたすらに追いかけた主人公2人が、夢がうつつになった将来で「うつつ足り得なかった」沢山のうつつを夢に見るシーンがある。
昼食でA定食とB定食があったとして、A定食を頼み、目の前でB定食を美味そうに食べている人がいたら、俺はすぐに「うわぁ、正解はあっちだったか……」と思ってしまう何かが小さい人間だ。
中川家の礼二がよくやっているモノマネで「店から出てきて進行方向の逆を一瞬見るサラリーマン」というのがあるけど、一瞬逆を見るのはサラリーマンの「Bやったんかなぁ」という気持ちの表れで、その後すぐに元の道を歩くのは「でもワシAやしなぁ」と自分の選ぶ道をまっすぐ歩まんとする気持ちの表れだと勝手に解釈している。
深読み?俺もそう思う。アレはただの「サラリーマンの習性」だろう。
ただ、日々の昼食にせよ、人生の大きな選択にせよ「選んだからには正解にしようね」という気持ちは自分の中で常に戒めとしてある。結局、何かを選ぶということは何かを捨てるということで、捨てたものに価値があるだなんて思いたくない「失うばかりが人生」だが「失うばかりの人生」ではないはずだ。
日本で『ラ・ラ・ランド」みたいな映画をやるとしたら、舞台は古びた定食屋とかがいいのかもしれない。ライアン・ゴズリングの役柄は客のサラリーマンが、エマ・ストーンの役柄は定食屋のおかみさん(胆石持ち)とかはどうだろうか。誰に提案しているのか自分でもわからない。
ストーリーは以下。
おかみさんの定食屋は「おかみさんが店主になる」という条件のもと、大手外食チェーンのフランチャイズ傘下に入る。メニューは充実しているし、味もよくなったものの、いつも来ていたサラリーマンは「あの、うまくもまずくもない、うまくもまずくもないからこそうまい定食が懐かしいなぁ」と思い激情、そして「これじゃあ俺が知る定食屋ではない。Not my fucking 店舗!」と言って唐突に終わる。
どうですかね?自分でも誰に提案しているかわからないけど。

The 釈迦如来

今の日本の音楽シーンを語るにおいて、3ピースバンド<The 釈迦如来>の存在は欠かすことができないだろう。「平成最後の昭和歌謡ロックバンドオーケストラ」との呼び声の高い彼らがニューアルバムを出すという情報をいち早く手に入れた我々は早速取材を申し込んだ。取材場所として指定されたのは南青山のカラオケ館。
「まさかこんなところに呼び出されるとは?」という思いと「まさかこんなところにカラ館が?」という思いを胸に109号室に向かうと、そこにはすでにメンバーのユウヤ(Dr)、ヨシキ(Dr)、そしてウマヤドノミコト(Dr)がいた。

ー今回のアルバムは全て新曲ということで、リスナーも心待ちにしていると思うんですけど、音源の公開を一切しないそうですね?それには何か理由があるんですか?
ヨシキ「昔俺らが海外のアーティストのCD買う時って、ほんとジャケ買いだったのよ。前情報とか一切ないから。もちろん友達から勧められたりもするんだけれど、それって自分で見つけた感じがしなくて。だから、誰も知らないバンドを見つけてやろうって躍起になってて。偶然見つけたバンドのCDがすげーよかったら、それだけで嬉しかったんだよなぁ。もちろんハズレもあるんだけど(笑)。だから今回はそういうドキドキをね」
ーリスナーにも感じさせたいと。
ヨシキ「いや、そういうわけではないんだけど。それとは別で、まぁ、なんつーの、思いつき?」
ーなんだったんですかさっきの話は。それで、今回ツアーも回られるんですよね?
ユウヤ「そう。北は北千住から南は南千住まで」
ー噺家さんみたいなこと言うんですね。
ヨシキ「でも、俺らと噺家が違うところは60日で230のハコを回るってところだよね」
ー北千住から南千住でそんなにライブハウス回るんですか?
ユウヤ「ライブハウス?違うよスナックだよ」
ーライブというより、営業ですね。
ウマヤド「まぁ、そういう点では噺家と一緒だよね。最後は『葡萄感』というスナックでやります」
ーなるほど。つぶつぶしてそうですね。さて、では今回の収録曲についてお聞かせいただきたいんですけど、まず、一曲目の『たそがれのまち』。この曲はどういう曲なんですか?
ウマヤド「これは実体験に基づいているんだけれど、日曜日に散歩していたらさ、駅前に俵万智がいて、たそがれていたんだよね」
ー歌人の?
ユウヤ「歌人の。歌人で手負いの」
ーほう。
ヨシキ「で、その話を聞いてこれはすぐに曲にしなきゃって思ってスタジオ入って。ほんと、一晩でできたんです」
ーなるほど。「勢いそのままに!」って感じなんですね。
ヨシキ「で、スタジオ出るときにスタジオ代払おうとしたら、誰もお財布にお金入ってなくて。どうしようかって、ね?」
ユウヤ「あと、お腹空いたねって」
ウマヤド「それで、スタジオ代はさておきご飯にしようかってなったんで、僕が近所のコンビニ行ってきて、お金おろして、おでん買って帰ってきたんです」
ーあ、そこで2曲目の「おでんのうた」に繋がるんですね。
ヨシキ「でもこいつ自分のものしか買ってこなかったから、ちょっと喧嘩になって」
ウマヤド「結構派手に暴れたら、追い出されて。でも、そのときにお金払わなくてよかったんですよ。出禁にもなったんですけど」
ユウヤ「そういうお金の貯め方もあるよねっていう、ある意味、貯蓄の歌だよね。これからはアーティストも貯金していくぞみたいな」
ーお金を下ろすときにスタジオ代分も下ろそうとは思わなかったんですか?
ウマヤド「あんまり…お腹空いてたし…」
ユウヤ「空腹は最大のスパイスっていいますし」
ー今いうセリフではないですけど。で、最後の曲がバラードの『MA-CHI-BOW-KE』ですか。
ヨシキ「これは俺らの長年の夢を歌った歌なんだ」
ー夢ですか?
ユウヤ「そう。いつかはバンドマンとしてでっかくなって、俵万智の陰毛を燃やすぞっていう夢」
ーほう。
ウマヤド「でも正しくは『MA-CHI-KE-BOW』(万智、毛、ボゥ)じゃないかって、もめたんです」
ヨシキ「でも、俺ら正確さとか、そういう土俵で戦ってないし、俵という字はタワラとも読めるしってことでコレでいこうと」
ー後半関係ないですね。
ユウヤ「歌人で手負いだし」
ーもっと関係ないですね。本日はありがとうございました。

取材後、カラオケ館の料金を払わされた取材班は各々の家に帰り、妻を強く抱いた。

第一回「『君の瞳に恋してる』コンテスト」

君野:
本日は第一回「『君の瞳に恋してる』コンテスト」にご来場頂きまして誠にありがとうございます。会場は東京キネマ倶楽部よりお送りいたします。先ほど支配人の方に「未だかつてこんなにも客席がガラガラだったことはない。貸したことを後悔している」とお褒めの言葉を頂きました。さて中継生放送のラジオでお聞きの皆様、会場のこの熱気が伝わるでしょうか?そもそも今回のコンテストをラジオでお楽しみの皆様は気が触れているのでしょうか?
ご紹介が遅れましたワタクシ、司会の君野仁美と申します。今日ほどこの名前に生まれたことを後悔した日はございません。
さて、早速ではございますが、エントリーナンバー1「Boys Town Gang」の登場です。曲はもちろん『君の瞳に恋してる』。
それでは張り切ってどうぞ!

君野:
踊らせたいのか、笑わせたいのか。
そんな不思議な『君の瞳に恋してる』でしたね。
では早速、審査員長の今治フランキーさんよりコメントをいただきましょう。

今治:
お疲れ様でした。最初から最後まで極めて洗練されていない感じがなんとも味わいがあったと思います。
左右のお二人が”タウン・ギャング”の”ボーイズ”なんでしょうか?
にしてはなんだか才能のないフレディー・マーキュリーというか、モテないゲイみたいにヒョロッとしていたのが笑わせたいのか困らせたいのか。なんとも不思議な時間でした。全体的に動きのパターンが少ないのに何か理由は?…なるほど、楽をしたかったんですね。
サビ前のイントロからサビにかけての踊りはもはや桂枝雀師匠でいうところ”緊張と緩和”と言っていいでしょう。歌詞のないイントロ部分、ヴォーカルの女性を挟み、中途半端に足を入れたり入れなかったりするところで、「ちゃんと練習してるのか?」とこちらは不安になるわけですが、そこに来てサビで突然やってくる極めて考えられてない、言うなれば「だだっ子ダンス」。上半身を左右に、気持ち早めにバタバタと振るだけ。すごいですね。思わず笑ってしまいました。
そこを小馬鹿にしようとしたカメラマンさんがまた素晴らしい。2番のサビ部分ではヴォーカルの女性に寄って中々タウン・ギャング・ボーイズを見せないでしょう?もうこっちは見たくて仕方ないんですよね。で、カメラの端っこでパタパタした手が見え隠れする。こちらはフレームの外のパタパタを想像する。それがまた笑いを誘います。
これはカメラワークの妙と言っていいでしょうね。もう一度見てみたいです。ちなみに、途中で一回スフィンクスみたいなやつを挟むのはどういう意図があったんですか?…なんとなく、ですか。ありがとうございます。聞いた私がバカでした。

君野:
今治さん、ありがとうございました。
さぁ、次の方々に登場していただきましょう。エントリーナンバー2「Boys Town Gang」。曲はもちろん『君の瞳に恋してる』。
張り切ってどうぞ!

君野:
さぁ、また趣向の異なる『君の瞳に恋してる』でしたが、今治さん。
いかがでしたでしょうか?講評をお願いします。

今治:
お疲れ様でした。
非常に表情豊かな『君の瞳に恋してる』だったと思います。先ほどのチームとは違い、全体像が見渡せるいい『君の瞳に恋してる』だったと思います。
さっきのスフィンクスみたいなやつはスフィンクスだったんですね。しかも2対。よく見ると後ろはどこかパルテノン神殿の柱を彷彿とさせる。古代文明をダンスミュージックで消化したいのでしょうか?無理だと思います。
2番の冒頭にある小芝居が見渡せる演出は◎。タウン・ギャング・ボーイズが全く演技が出来ていない点も高評価ですね。よく見るとそれぞれが表情を作っているんですが、作りきれていない感じに練習量のなさを感じます。

君野:
今治さん、ありがとうございました。
では最後のチームに出場して頂きましょう。
エントリーナンバー3、もちろん「Boys Town Gang」。曲ももちろん『君の瞳に恋してる』。
やれるもんならやってみろ!

君野:
自分は、知らず知らずのうちに覚せい剤をやったのか。
思わずそう思ってしまう『君の瞳に恋してる』でしたね。では、今治さん。講評をお願いいたします。

今治:
え〜お疲れ様でした。
タウン・ギャング・ボーイズがマイクを持っているのに気がついた時から、もう僕は笑っていましたね。
「サビはパタパタするのか?」
その期待一つで見続けるわけですが、まさかコーラスになるとは…。しかし、これボイスは入っていないですよね。となるとおもちゃのマイクを持たされているのか?なんのために?パタパタ防止?
それでもパタパタする。パタパタせずにはいられない。そんな二人に釘付けに…なるかと思えば、背面のよくわからないCGには時々大きな目が現れてひどく不安を煽るわけです。間違っていたら大変恐縮なのですが、何かフリーメーソンと関係があるのでしょうか?

君野:
ありがとうございました。
さぁ、以上3組のパフォーマンスが終了しました。それでは、もう一度ステージに登場して頂きましょう。皆様、盛大な拍手でお迎え下さい!
…では、今治さん。優勝チームの発表をお願いします。

今治:
はい。優勝は・・・『Boys Town Gang』の皆さんです!

君野:
『Boys Town Gang』のみなさん!
おめでとうございます!
というわけで、優勝は『Boys Town Gang』のみなさんでした。
次回は、第八五回「『ジンギスカン』コンテスト」でお会いしましょう〜。

前途は多難でちと洋々

「報酬1000万円を用意できましたので、今すぐお会いしませんか?」
このところ1000万円をポンと出せる朝倉という女性からお誘いのメールが来る。
次のメールで「報酬に関してはお会いしてから小切手という形でも大丈夫ですよ?」と余裕を見せながらも、また次のメールでは「難しい条件は一切ございません。一晩アナタの体を貸して欲しいのです」と急に性欲を丸出しにしてくる。朝倉、いささか情緒不安定である。
そういう迷惑メールが連日昼夜問わず、一時間ごとに来るので大変煩わしいのだが、土日はピタリと来なくなる。どうやら迷惑メールの分際できっちり週休2日らしい。
「お前の迷惑のかけたさ、そんなもんかよ!土日にも迷惑かけてこそじゃねぇのかよ!」
胸ぐらを掴んでそう言ってやりたい。「土日は休みだろうから…」と、気を遣ってくれているとしたら、それは皆目見当違いで、そう思うくらいなら、はなっから送ってくれるなという話だ。
朝倉からメールの来ない土日。正直に言おう。もはや俺は寂しさを感じている。
もちろん、土日に来たらそれはそれでイラっとするが、 逆に土日に一通でも来たら「完全週休二日制なのに…わざわざ私のために?」と俺は体を許してしまう気がする。1000万円の報酬とやらもいよいよ魅力的だ。
いち迷惑メールをとってもそうなのだが、とかくこの世はままならぬ。
来て欲しいものは来ないし、来て欲しくないものは来る。望んでもいない「ままならぬママ」になる人もいればママなれずままならぬ人もいる。
世界はそうやって回っているのに「自分も他人もままあるべき」信者は世にゴマンといて、そういう人たちの励ましというのは自分が善だと思いこんでいる分輪をかけてタチが悪い。よっぽど偽善の方が懐に入って来ることもあるというのに。
「世の中ままならないなぁ!」
「ですよねぇ!」
それくらいの温度でいい。
「世の中ままならないなぁ!」
「え、大丈夫?無理に明るく振る舞わなくていいんだよ?飲みに行く?」
行かねぇよ!首締めるぞ!
二年ほど温めていた企画が通り、それはそれで嬉しいのだが、ままならないことが相当多く非常にナーバスだ。自分で炊いた真似、もとい蒔いた種なので仕方なし。ままならずとも色々と何とかしてきた俺じゃないか。今回もきっと何とかなるだろう。
「きっとままならないぞ!」
そういう後ろ向きなんだか前向きなんだか分からない気持ち一つの日々だが、そこにも救いはあるはずだ。前途は多難。ちと洋々。
朝倉に返信がてらそういう話をしようかと思うのだけど、迷惑メールに迷惑がられそうで実行はしていない。

寺井の絶望

某日ー
東京と大阪、時々京都を行ったり来たりしている。
気持ちは完全に売れっ子吉本芸人だ。
最初のうちは「わぁ、新幹線だ新幹線だぁ」とはしゃぐことも出来たけど、週1の頻度で乗ると、もはや新幹線に対して「わぁ、古女房だ古女房……だぁ……」くらいにしか思わない。
好きじゃなくなってからが愛であるように、はしゃぐこともなくなってからが俺と新幹線も本当の関係に近づけるはずだ。無論、目的が仕事の移動というのも極めて俺のナーバスにさせる要因でもある。しかし、それは吉本の芸人もそうで、なんばグランド花月での舞台終わり、テレ朝の収録に向かう東京行きの新幹線の中で、吉本の芸人は何を考えているのだろうか。次のネタとか、ウェブマガジンの連載の内容とか、あとは現地妻、ないしは妻のこと等だろうか。
どれにせよ何となく絶望と距離の近い、絶望界隈のことだと思う。「明日は乞食」という思いが売れっ子の移動を支える。
俺は清水富美加の引退を大阪へ向かう新幹線の中で知り、「ああ、この人も絶望したのか」と思った。どんなに笑っても心の奥が笑ってない感じが好きだったのだけれど、色々聞くと「さもありなん」という感じだ。
今日は大阪へ向かう新幹線の中で隣のサラリーマンがずっと風俗の情報を見ていた。写メ日記を入念に見ていて、「他人の目」という恥を「失敗したくなさ」が軽々超える眼。旅先で、しかも風俗で、絶望なんかしたくない。その主張を全面に出すというのは逆に清々しい気持ちさえする。
希望を持つということは恥を捨てるということなのかもしれない。そもそも希望を持つこと自体、少し下品。
今日も新幹線は絶望を乗せて走っている。よく分からないがそういうことだ。

某日ー
初対面の人と朝まで飲みに連れて行ってもらい、なんなら全て奢ってもらい、しまいにゃタクシーで家まで送ってもらう。これはすごいことだ。もらいすぎじゃないのか。なかなか並みの大人にはできない芸当だろう。
奢ることに衒いがない人は奢られることに衒いがないし、奢られることに衒いがない人は奢ることに衒いがない。常々そう思っている俺でも「少し衒えば?そして雨に歌えば?」と思ってしまうほどだった。
不思議なことにそういう人に限って、名前が寺井だったりする。
その人はもちろん違かったが。そこまでうまい話があってもいいのに。

毎日がエブリディ

……みたいな言葉だけで会話が続かないだろうか。
「お嬢様、コチラみずみずしい水です」
「あら爺や。ありがとう。ちょうどもちもちとした餅を買ったところだったの」
「何がちょうどなのか全く分かりません。お嬢様の適当な返しには、さすがの私も呆れるほどに呆れてしまいます」
「そう。爺やには通じないのね。残念なことに残念だわ」
「そう気を落とさないでください。最近お嬢様に元気がないのは、海外出張をなさっている旦那様に会いたく会いたくて会いたからではないかと、爺やは心配しているのです」
「別に、おとうさまのことなんて……。顔を見ないからせいぜいするほどせいぜいしているわよ」
「確かに、思春期のお嬢さまの前で、全裸になって『俺の見てくれを見てくれ』とおっしゃるのは私も如何かと思いますが」
「同情するなら同情してくれてもいいわ」
「そうでした。今日はお嬢様に特別な贈り物を贈ります」
「え…絵?しかも普通の?冗談は冗談だけにしてよ」
「囲っている囲いをご覧になってください」
「何かしらの……何かしら?」
「ガクガクの額です」
「……そういうのもアリなの?」
「アリ寄りのアリです」
「ナシ寄りのナシよりいくらかマシかもね。いくらか会話が楽になりそうだわ。爺や、たまにはいいこと思いつくじゃない」
「伊達に苗字が伊達ではないので」
「ご褒美に褒美をとらせるわ。何がいい?」
「でしたら、この重々しい重しを外して頂けないでしょうか?」
「いいけど……。代わりに辛酸を舐めるほど辛酸を舐めてもらうけど?」
「難しい難題ですね」
「人生と同じ。それが人生」
「お嬢様、悟りを悟りましたね」
「成長を見てきただけに、泣けに泣けるでしょ?」
「驚くべきことに驚きました」
「本当にあった実話として本にでもしようかしら」
「嘘みたいな本当のフィクションより、売れるベストセラーになることでしょうね」
「さ、決定は決まった?」
「死ぬ気で死ぬよりは辛酸を舐めつくすまで辛酸を舐めつくした方が」
「偉い!男らしい男性!でも、その前に一つ約束を誓って」
「はて?」
「明日もこの似たような言葉を繰り返し繰り返す遊びに付き合って。爺や、この遊びにすごく上手な手練れなんだもの」
「いいですよ。まったく……本当にトートロジー好きなお嬢様に、トートロ爺はお手上げです」
「「あははははは」」と笑う二人。

今日の結果:続く。(※但し、無理はある)