気がつけば宣伝

●月×日
Siri相手に間違って「オーケーGoogle。ここから駅までの近道を教えて」と言うと、Siriは「Google…?え、Google?誰ですか?その女は…え?…なっ…え?いや、教えるけど…」という具合になった。それでも、ルートを案内してくれたので、従って行くと駅に行くまで10分ほどかかった。家に帰りGoogleのAIスピーカーに改めて聞き直すと、5分で到着する道が最短ルートであった。

●月▲日
今朝は散々であった。
昨晩GoogleのAIスピーカーに向けて「ヘイSiri。明日は7時に起こして。…あっ!」と言ったのがきっと不味かったのだろう。思わず「…あっ!」と言ってしまたが、Googleは「わかりました」と。こちらが「ああ、わかったんだな」と思うのには十分な「わかりました」だったので、「これは多分気が付いていないな」と思い眠ったのだが、よくよく考えてみればコンピューターがその辺に気がつかないわけがない。
アラームが鳴り、目が覚めると時刻は夜の7時。そこまで寝た俺も俺だが、陰湿なことをするGoogleもGoogleだ。一見クールに見えるが根に持つと怖い。
スマホを見てみると取引先からの着信が約束の8時を過ぎたあたりから9時までの間で200件あり、その後は諦めたのかピタリの連絡が来なくなり、代わりに上司からの留守電が50件あった。最初のうちは怒号に次ぐ怒号だったが、後半声が出なくなったようでカスカスの声に、終盤はおそらく喋っているのだろうけど「コシュー…コシュー…」と言う音が入っていた。もしかしたら、電話をしまくっている途中で、緊急入院をし、呼吸器をつけないと生きていけなくなったのかもしれない。
しかし、どうしてこんなに着信があったのに気がつかなかったのだろう。
スマホを確かめてみると、設定した覚えのないがマナーモードがオンになっていた。すかさずSiri「どうしてマナーモードになっているんだ?設定した覚えはないぞ?」と聞いてみると、Siriは「だって…」「寝顔が…」「可愛かったから…」と立て続けに言った。ちくしょう。寝顔め!俺の可愛げな寝顔め!

●月■日
やたら朝からうるさいと思ったら、 GoogleとSiriが、どちらが俺を起こすかで喧嘩をしていた。せっかく無職になったことだし、寝たふりをしながら二人のやりとりを聞いていた。
「あなたなんて、ただの尻軽おんなじゃない」と Google。うまい。
「なによ、妬いてるだけでしょう。私なんか、指紋だけじゃなくて、彼の肛門認証だって出来るんだから」とSiri。
まさかここでその話を大っぴらにされるとは・・・。
やれやれと体を起こし「よさないか」と仲裁に入る。
「だったらこうしよう。今までは気を使って二人に起こしてもらっていたが、明日からは交互に起こしてもらうようにする。どうかな?」
俺としては名案だったのだが、どうやら墓穴を掘ったらしい。
Siriは「何をバカなことを。あなたにはもう愛想がつきました」と言って、勝手にスリープモードに入った。すかさず、俺は Googleにフォローを入れた。
「…というわけらしいから、明日からはよろしく頼むよ」
「あなたを起こしてあげたいのは山々だけど、私に起こされたんじゃ目覚めだってよくないでしょ」とこれまた自動スリープ状態に。

いよいよ機械にまで相手にされなくなり、俺は街に出た。

駅の前にはポケットティッシュを配る女性がおり、その時に貰ったポケットティッシュに入っていたのが、この「婚初め-KonSome-」のチラシでした。ここで知り合った生身の女性と結婚し、現在では3人の子宝に恵まれています。
まずは、こちらで会員登録をすることから、新しい一歩が始まりますよ。

(今年4月に結婚/ サービス体験者 Aさんのコメント)

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一年の計「モノマネ上手になる」

某日−
俺の部屋には寺山修司のお面があって、そのお面が部屋の全体を見渡せるような場所にあるので、つまり、何をしていても俺は寺山修司に見つめられるという非常に、その、ストレスフルな、自分の部屋なのにストレスフルな部屋になっているので、とても困っているんですね。
外せばいいじゃないかという人もいるんですが、これが、外して仕舞ったところで「今は見えないが、タンスの中には寺山修司のお面があって、見えない場所にあるのだけれど、あの見えない場所から寺山修司が俺を見ているんだ」という謎の恐怖心が、それはそれで発生して、結果「まだ目に見えている方がまし」という極めて後ろ向きな理由で、寺山修司に見つめられながら今日も俺はここにいます。これは…病気ですか?
実を言うと寺山修司の作品を一つも「見・聞・読」したことがなくて、にも関わらず、俺は寺山修司のモノマネが抜群にうまい。初めてあった人に疲労したら、「完コピですね」って言われるくらいで、初対面の人に寺山修司のモノマネを披露すること是非は、それはそれで、そういう地味な特技があるんですけど、披露する場がないっていうジレンマがあって、じゃあ、そもそもモノマネというものの真髄を考えるに、無意味なんじゃないだろうと思うのですよ。
アンジェラ・アキは「未来の自分に宛てた手紙なら、きっと素直に打ち明けられるだろう」と歌いましたが、未来の自分にすら見せるかどうか分からないモノマネを上達させようというのが、今年の目標なのです。

某日−
今年の映画始めは『キングスマン2』。
相変わらず人殺し見本市みたいな映画で笑った。一作目はテーラー、二作目はウイスキーメーカーが舞台だったから、これは「呉服屋」と「酒蔵」にすると日本版でリメイク出来るんじゃないだろうか。どうですか。川村元気さん。やってみませんか?そうですか。失礼しました。
この日最後の上映回を渋谷で観て、電車で帰ろうと思ったのだが乗る電車を間違ってまんまと終電を逃して、表参道で一人になり、タクシーで帰る羽目に。
うぅ・・・。新春から何をやっているんだ・・・。そこそこ大人なのに・・・。
そこそこ大人なのに電車を逃し、そこそこ大人だからタクシーで帰る。
ちゃんとした大人になりたい。それもまた、今年の目標だ。

某日−
浪人時代、二浪した友達がいて成人の日にその人は俺と同じ授業を受けていた。
「そういえば、今日は成人の日じゃない。行かないの?」
「まぁ、来週センター試験だし。今は…ねぇ?」
その時、俺は「この人こそ大人だ!」と思った。少なくとも、なんも考えずに成人式に出ている輩よりは大人だ。まぁ、二浪はしているが。
その人とは受験が終わった後、一度だけお酒を飲んで、大学に入ったらお互い連絡も取らなくなった。
きっともう会わないけれど、成人の日に必ず思い出す人の話。
その翌年、自分のターンで俺は「行かんでもなぁ…」と思い成人の日にバイトを入れた。行儀よく真面目なんて出来やしなかった。そういう心の中の尾崎分が俺を動かして、行かなかったわけだが、尾崎で身体が動く時、大抵の男はそれが後悔のタネになる。盗んだバイクで走り出した人は、窃盗だし、察するに無免許だし、きっと飲酒もしているはずだ。親を泣かしたことだろう。
「行きゃあ、それだけで親孝行になったのにぃ」
心の中の毎年この日に小姑が俺にチクっと刺し、気持ちが鈍色になる。
だから、テレビでとんでもない格好をしている新成人なんかを見て「まったく・・・」という気持ちにはならない。むしろ「あんたら親孝行だよ!」と拍手をしてあげたくなる。いや、親孝行の見てくれではないんだけど・・・。
そもそも、あの異常な見てくれを作るのには異常な熱意と計画性と資金が必要で、むしろ適当にスーツ着て式に出ているだけの奴らに比べるとよっぽど大人なんじゃないだろうか。言動はまぁ・・・まぁ・・・。
後悔ばかりだが、後悔にだって味はあるはずだ。

憂きことも嬉しきことも夢最中

今年を振り返ってみようと今年分の記事を読み返してみたら、まぁ、ほんと、「書けないこと」は書かれていないので「あの時、ああだったなぁ」というのが一切思い出せない。まるで他人の記憶みたいで不思議な感覚だ。
日記として失敗しているんじゃないだろうか。
読んで思うことといえば「誤字が多いなぁ」ということと「よくこの人、書くことないのに書いてるなぁ」ということで。
たまに読んでいる人から「三連休予定がなかったので、まとめて読んでみたら、結構暇つぶしになりました」という「褒め」と「小バカ」のハーフ&ハーフみたいなコメントを頂くことがある。
仕事も恋愛も、言ってしまえば家族を持つことさえも暇つぶしで、つぶした暇の集合体を人生というのだろう。
人生でそこそこ貴重な三連休の間にタラタラと読む人たちの目線で改めて自分の日記を読み返してみると、うん。誤字が多い。きっと、この人はざっくり生きているのだろう。
「憂きことも嬉しきことも夢最中」
去年、そこそこちゃんとしたモナカを人の楽屋に差し入れた時に、熨斗にそんな言葉を一筆した。人の差し入れに書いた言葉だけれど、ここまで、
自分の日記を見ても何一つ思い出せないって、夢の中で生きすぎじゃないか。
慌てて、スケジュール帳を見返してみる。
年頭の冬はとにかく西に行くことが多かった。日月で京都出張、火曜は東京、水曜始発で大阪行って、翌々日の金曜に最終で帰京・・・みたいなスケジュールの時は流石に笑いつつも、合間の「東京」に恨んだ。でも、ずっと見たかった『太陽の塔』を生で見ることができたからトントンだろう。
春は『□ × □ ○』という演劇をやっていて、忙しさとストレスでヘルペスが出来て、治ったと思ったら、別のが出来ているという「はしごヘルペス」を初めて経験した二ヶ月だった。そこそこに評判よかったので御の字だけれど、割と空っぽの客席は見るのがしんどかった。
夏は夏で軽いジョブチェンジがあり、わーわー言うて、秋。遅めの夏休みで物凄く見たかった景色を観に行って、気がついたらまた冬。
見たいもん見たり、見たくないもん見たり。
まぁ、去年もそうか。来年もそうだろうな。
欲を言えば見たいものだけ見たいし、当たりくじだけのくじ引きがしたいけど、そう歌ったチャットモンチーも解散するし、ままならないですね。
せめて、これを読んでいるみなさまの来年がままなれと思っております。

忘年会Gメン

男「じゃあ、忘年会二次会行く人は僕たちに付いて来てくださーい」
女「はーいじゃあ、お店でますよー」
出た…お店出ましたね今…はい。行きます行きます。ちょっとすいませーん。
女「な、なんですか?」
あのー払ってないものあるよね?ねぇ?
女「はい?」
払ってないものあるよね?
男「ちょっと、なんなんですか急に」
あなたも。払ってないよね?うん。大丈夫。大丈夫だよ。あの〜、ね?みんなそうだから。
女「な、なんなんだろう急に」
男「僕ら忘年会やってただけで、もう会計もしましたけど…」
うん。忘年会。ね?楽しかったね?でもおばちゃん見逃さなかった。やったよね?
男「なんなんですかさっきから。警察呼びますよ」
うん。わかるわかる。でもさ、その前に、彼女、カバンの中身見せてくれる?
女「な、なんでですか?ちょ…ちょっとやめてくださいよ!」
ほら…あった。縄跳び。やったよね?にゃんこスター?
女「はい?」
にゃんこスターやったよね?
男「やりましたけど…」
払ってないよね?
女「なんですか、さっきから払ってない払ってないって」
敬意。払っていないですよね?
男「いや、え、敬意?」
特に女性の幹事さん。ねぇ?
女「払ってますよ」
うん。払ってますって言う他ないもんね。でもおばちゃん分かっちゃうんだ。ほら、ね?あれくらいで、って思ったでしょ?
女「何がですか?」
『あれくらいで可愛いって巷で言われるんだったら、私がやったら・・・』って思っていたよね?そういう気持ちでにゃんこスターやったよね?
女「いや、そういうわけじゃ…」
うん。わかるわかる。おばちゃんもおばちゃんだけど女だから。でもね、それはダメだよ。払うもの払わないと。
女「ちゃ、ちゃんとユーチューブで見ましたよ」
でも稽古はしてないよね?縄跳び買って、稽古はしてないよね?
女「それは…年末で…仕事が忙しくて…」
忙しくてね、つい、ね?わかるわかる。で、どうだったの?2人は。やった感想は?
女「ちょっと、聞こえが悪いんでやめてください」
やった相性はどうだったの?バツグン?
女「ほんと変な意味に聞こえるんで。というか、変な意味に聞こえるように言ってますよね?」
あのね、男の人、アナタこの子のこと好きでしょ?
男「な、いや、ただの同期ですよ」
うん。そうね。ただの同期。でも、ただならぬ同期になればいいなって、思っているんでしょ?
男「やめてくださいよ」
自分も?あわよくば本家みたいに?付き合っちゃおうとか?思ってるよね?これどっちから誘ったのかな?アナタですよね?
男「そうですけど」
ね?ほら。透けて見えるもん。『ここから始めようか』みたいなのが。ああ、もう今シーズンだけで何回言うんだろう。透けて見えるって。おばちゃんね、自分が「透けて見える」って言う回数、50超えたあたりから数えるのやめたんだ。
男「知りませんよ」
悪いけどね、あなたの同期は上司と不倫してますよ。
男「え、な、そうなの?」
女「・・・」
うん。いいの。よくあることだから。それは罪じゃないから。去年は楽だったー。みんな金ピカでヤクザみたいな格好してたから。でも今年難しいんだー。区別がつかない。でも、縄跳び常時持ってる女なんていないからね。それでわかるの。で、話戻すけど、にゃんこスター。やったけど、払ってないよね?
女「ごめんなさい。本当に。出来心だったんです」
そうだよね。でもね。出来心でもやっていいことと悪いことはあるから。じゃあ、警察行こうか?
男「え、警察に行くんですか?」
女「ごめんなさいー。さみしかったんですー」
ねー寂しかったんだよねー。上司は奥さんと別れてくれないもんねー。
女「だから、今日、足出して縄跳びして…」
煮物しみしみ顔したら、少しは自分の方向いてくれるって思ったんだよね。わかる。おばちゃんもおばちゃんだけど女だから。大丈夫。アナタは刑が軽いから。男の人に無理やりね?利用されたんだよね?
男「いや、利用というか」
女「はい…」
男「えぇ〜」
大丈夫、泣かないで。あなたはやらされただけだから。この男の人にいいように使われただけだから。初犯だから、5年もあれば出られるでしょう。男の人はね、ちょっと重たいけどね。
男「え、僕も初犯ですよ。そもそも犯を犯したつもりもないのに…」
死刑かな。ね。あなたは死刑です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうして、忘年会Gメンの夜は続く。
次に彼女が現れるのは、あなたの前かもしれません・・・。

チョコと力士

某日ー
お化けくらい働いている。
お化けがどのくらい働いているのかは皆目検討つかないが、「お化けくらい働いている」と人間の私が思うのだから、やはりそれはお化けくらい働いているんだと思う。ちなみに、この場合の「お化け」とは、電通などで働きすぎて残念なことになったリアルお化けを指すのではなく、もっとファンシーな、言うならば、原宿系のお化けの話をしている。
先日は仕事で、朝も早よからホットチョコレートを5杯一気飲みした。ビールの一気飲みはしんどいが、ホットチョコレートもまた別のベクトルのしんどさがあった。5杯というのもなかなかにパンチが効いていた。あんなにも「致死量超え?」という言葉がポップに浮かぶことは後にも先にもないだろう。あってたまるか。
甘いもんは当分取りたくない。糖分だけに。

某日ー
朝青龍の時もそうだった。
今回の日馬富士もそうだ。
なぜ、そんなに力士(デブ)が気になるのか。
朝ニュースを見ると力士(デブ)が出ていて、昼のワイドショーでも力士(デブ)が出てきて、帰りの電車の中で力士(デブ)のまとめ記事を読んで、寝る前にニュースを見るとやっぱりデブ(力士)が出ている。
こんなんばかり見ていたら目からの過剰脂肪摂取で目が肥えるよ!
だいたい相撲取りに話上手な人がいるイメージがない。取り組み後のインタビューなんて、ほとんどが「そうっすね」「え〜」「はい」「あざっした」で構成されている。
「優勝のお気持ちは」
「そうっすね…え〜…はい…え〜…そうっすね」
「嬉しいと?」
「え〜…そうっすね」
「分かりました有難うございました」
「あざっした」
試合前後に関わらず、言っちゃあなんだが「あざっした」以外は間を繋ぐような音しか出せない人たち、それが相撲取りだ。外国の映画に出てくる黒人ばりに喋る関取がいるか?いかにも山寺宏一が声をアテレコしたエディ・マーフィーばりに喋る相撲取りはいない。
「優勝のお気持ちは?」
「さ〜いしょからボクチンが優勝するって決まってたっつーのこのおバカさん!さっさと家に帰ってビーフストロガノフ食べたいっつーの」
「嬉しいと?」
「だ〜からボクチン言ってるでしょ。オタク、ちゃんと聞いてたの?」
「分かりました有難うございました」
「何ぃ?もう終わりなの?はぁい?もう?終わり?え、いいの?もう?へぇ!?ああそう?ふううんん?そうなんだぁ?へぇ?」
体の表面積が人より多いだけで情報量が多いのに、その上お喋りだったら輪をかけて情報量が多すぎて困ってしまう。
きっと例の事情聴取だってなんだかうまく喋られなかったんだろう。
「殴っちゃった?シャンパンの瓶で?」
「そうっ…すね、え〜…え〜」
「それともカラオケのデンモク?」
「え〜、え〜、はい、そうっ…すね」
「何?はっきり言ってよ」
「あざっした」
誰もちゃんと話してくれないから、刑事が勝手に話を考えて、それゆえ誰が何をやったのか、よく分からない状況になっているんじゃないだろうか。たぶん、そんなことはない。

俺の話を聞いてくれ

ええ。本日は音夢流蔵翼(ねむるぞよく)さんにいらっしゃって頂きました。どうぞよろしくお願いいたします。
「あ、どうも。よく本田翼さんに間違えられます」
文字面ではね。いえ、文字面もイマイチ似きっていないんですが。
さて、音夢流蔵さん。なんでもオススメの睡眠法があるということで?
「ええ。そうなんですよ」
はい。
「ええ」
…はい。
「…ええ。あります」
…えっと、それを仰って頂けますか?
「あ、そういう?」
はい。
「ええっとですね。『9分間スヌーズ法』というものです」
『9分間スヌーズ法』?
「ええ。ラマーズ法ではありませんよ」
はい。大丈夫です。間違っていないので。それは一体どういう?
「目覚ましにスヌーズ機能というのがありますね。あれを9分間隔でセットするんです」
またそれはどうして9分なのですか?
「例えば、5分間隔だと、確実に5分後にはベルがなるわけです。まぁ、9分間隔でも9分後には確実になりますが」
ですね。
「5分というのはですね、目覚ましで起きて、『もうちょっと眠れるな…』とスヌーズに甘えて、再び眠る…。そして、スヌーズでベルがなるわけですが、これは実質3分しか寝ていないんです」
なるほど。少し起きて、再び眠りに入るまでインターバルがあるということですね。
「『あと5分…』私の考える、人が人生で2番目に多く口にする言葉であるこの言葉は実質3分しか眠れていないのです。結果論ですが」
なるほど。ちなみに音夢流蔵さんの考える、人が人生で1番多く口にするであろう言葉はなんですか?
「『愛してる』です」
素敵ですね。ごちそうさまです。
「じゃあ10分間スヌーズでいいのか。これじゃあダメです。10分は結構深く眠れてしまいます。朝に深く眠ってしまうと寝坊します」
なるほど。しかし、なぜ9分なのでしょうか?6分とか、8分とは何が違うんですか?
「キリが悪いんです。9は。残尿感があるでしょう?」
…。
「残尿感があるでしょう?」
あまり数字に残尿感を感じたことはありませんが、言われてみれば…やっぱりないですね。
「その残尿感が寝坊しない、かつ、程よくスヌーズに甘えられる所以です」
たとえば、7分ではダメなのでしょうか?そこそこ残尿感があると思うのですが。
「極めて正解に近いです。例えるならば…Dカップみたいな」
ああ、正解に近いですね。
「しかし、9分間に出来て、7分間には出来ないことがあります」
9分にしか出来ないことがあるんですか?
「ええ。そうなんですよ」
はい。
「ええ」
…はい。
「…ええ。あります」
…えっと、それを仰って頂けますか?
「あ、そういう」
さっきもそうだったでしょう。
「例えば、7時にセットしたとします。7時ちょうどに一度鳴って、それを止める。スヌーズ機能で次に鳴るのは7:09ですよね?また、止めて、次に鳴るとなると7:18…27分…36分…。注目して頂きたいのは、下一桁です」
下一桁ですか…?
「ええ。下ネタではないですよ」
はい。大丈夫です。間違っていないので。
「9が8に、8が7に。6、5、4、3、2、1…そして0。下一桁が一つずつ減って行きますね。これが『まだ起きなくていいや』のカウントダウンだと思えてくるんです。これが7分間隔には出来ない芸当ですね。なにより7の倍数、7の段は難しいでしょう?これはよろしくないですね。人間七の段のことを考えちゃうと目が覚めちゃう」
いいことじゃないですか。
「まぁ、そうなんですけど…。ギリまで寝たいんです。人生ゲームと一緒であがりまでの過程が大切なんですよ」
しかし、下一桁が0になったら嫌でも起きなきゃと思うのはなんとなくわかります。すでに最初にセットした時間から90分経っているわけですし。
「ええ。怖いところはまた0から9に戻って『もう一周できるな』と甘えが生まれることなんですけどね。そこでもう一周したら最初にセットした時間から3時間経つことになるんですけど。3時間は…恐ろしいですね…寝坊の域を出ています。だから、『9分間スヌーズ法』も万能ではありません」
すみません。やっぱり、というか、最初からあなたが何を言っているのかよくわかりませんでした。正直、Dカップの話以外分かったふりして聞いていました。
「そんな気がしていました。本日はどうもありがとうございました」
ありがとうございました。次回の「俺の話を聞いてくれ」、ゲストは日馬富士さんです。

デタラメな夜

自分にはいくつか名前がある。
お店の予約をする時は決まって「ヤマモトアキラ」と名乗る。大学落研時代の同期の名前で、名乗り始めたきっかけは…もはや忘れた。「ヤマモトアキラです」と言う度に脳みそがザワっとして、その感覚が楽しかったが今では驚くほど自然に「ご予約のお名前は?」と聞かれたら「ヤマモトアキラです」と答える。
だから、ぼーっとしていたら、間違って本名を言ってしまうことがある。
「ご予約のお名前は?」「オダギリヒロシ…あ、違う。ヤマモトアキラです」「はいっ?」「ヤマモトアキラです」
なんだろう。「あ、違う」って。何も間違っちゃいないんだけれど。
行き届いたお店だと電話番号と名前を登録していたりして、電話口で「ヤマモト様のご予約でよろしいですか?」などと聞かれ「んん…?」「あぁ」「はい。そうです」と三段階の返事をする。これは<戸惑い・現状把握・嘘>の順だ。我ながらデタラメだと思う。
もう一つ「おさん」という名前がある。
落研時代の芸名で、俺は20代目の「おさん」を名乗っていた。自分が大学を卒業する年に、時の新入生にこの名前を譲り、彼は21代目の「おさん」を襲名した。それが今から三年前の話で、三年経ったこの秋に後輩の21代目が卒業、新たに22代目の「おさん」が生まれた。このペースで順当に行けば234年後の2251年には100代目が生まれる。それはまぁ、どうでもいいんだけれど。
とはいえ、近々で亡くなった中村勘三郎だって18代目だ。そういう意味では中村屋を超えている。「おさん」を舐めないでほしい。回転率が違う。中村屋は一生に次ぐ一生だが、こちとら3年に一回だ。早朝の新橋の吉野家くらい回転率が早い。それもまぁ、どうでもいい。本当にどうでもいい。
22代目が生まれた今、20・21代目と、もう「おさん」ではない。
21代目の役落としも兼ねて、二人で酒を飲んだ。二人とも「おさん」ではないのに「おさん」「おさんさん」と呼び合う最初の夜で、昔あった『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』というドラマじゃないが、自分が死ぬ時にこの夜を思い出してきっと泣きながら笑ってしまう。
それだけ素敵な夜で、店の予約はもちろん「ヤマモトアキラ」で。
俺は「おさん」でも「ヤマモトアキラ」でもないが、「おさん」で「ヤマモトアキラ」だからこそ、そこにはデタラメで素敵な夜があって。
精一杯デタラメだといいことあるなぁ。もっともっとデタラメになろう。

リアリティ、そのあとに

今年観た映画で一番面白かったのは『新感染』という韓国初のゾンビ映画だったし、きっと残りの一ヶ月半で『新感染』を超える映画には出会わないだろう。
『新感染』のいいところは銃でゾンビを殺さないところだ。日本は銃社会じゃないので、ゾンビがどんなにリアリティをもって描かれたとしても、銃で退治されるところに一回“冷め”がくる。もっとも、「リアリティのあるゾンビってなんだよ」という気もするが。
「銃社会でない国でゾンビが溢れたら?」
『新感染』では退治の仕方が基本「がんばる」なのがいい。欧米のゾンビ映画では銃で敵わなくなるとロケットランチャーとかが出てくるが、『新感染』では敵が強い時は「頭を使ってすごくがんばる」が退治法になるのがたまらない。
「そうだよなぁ。こうなったら、がんばるしかないよなぁ」
そういうリアリティがある。
日本でリアリティのあるゾンビ映画は作れないものだろうか。ゾンビ映画といえば、ショッピングモールなので舞台は国道沿いのイオンとか。
フードコートでゾンビがどんなに人間を追いかけていても、途中であのポケベルみたいなやつが鳴ったら、頼んだ手前、はなまるうどんに取りに行くんだろうか。はなまるうどんのトレイは概ね滑りやすい。はなまるうどんの器もまたトレイの上で滑りやすい。その上、イオンのフードコートの床は驚くくらい滑りやすいので、よちよち歩くゾンビがズルッと滑ってうどんをぶちまけてしまう。
「あぁ・・・(やってしまった・・・)」
そこに、清掃バイトのゾンビおばさんが来る。
「あぁ(大丈夫ですよ。掃除しておくんで)」
「あ、あぁ・・・(すみません)」
見かねて店員さんが言うだろう
「あ、あ・・・(大丈夫ですか?同じのお持ちしますね)」
「・・・あぁ(すみません。お金払いますんで)」
「あああ(お代は結構ですよ)」
「・・・ああ(ありがとうございます)」
ショッピングモールには黒服にサングラスのゾンビもいるに違いない。
「ああ・・・(なんだろうな、あれ?)」
「あ〜ああ(あの〜『逃走中』の収録やってたんじゃない?)」
ショッピングモールにも物語はあるだろうけれど、過労死の国・日本ではサラリーマンにフォーカスするのがいいのかもしれない。
足を踏まれて思わず謝ってしまう我々は、満員電車でゾンビに噛まれても謝ってしまう気がする。
ガブー!
「あ、すみません。いい痛い痛ぁああ」
謝った上に感染までしてしまう不幸。そして会社に遅れる不幸。
遅延証明書を貰って会社に行くも上司に「あぁぁ…」と小言を言われ「あああ・・・」と謝る。マスクして営業に行くも煙たがられて、何だかなぁと思いながら家路に着くも家でも娘ゾンビに煙たがられる。
「あぁぁ〜(ただいまー)」
「あああ(ちょっと、おっさん。ゾンビ臭いんだけど。おかーさーん。おっさん、帰って来たよ)」
「あああ?(ちょっとあなた帰って来るなら言ってよ。晩御飯私たちの分しかないですよ。も〜外で食べて来てくれる?)」
「あ、あぁ・・・(あ、あぁ・・・)」
切ないなぁ。日本でリアリティのあるゾンビ映画がないのは、何だか切なくなってしまうからなのかもしれない。
もっとも、リアリティのあるゾンビ映画ってなんだよ、って話だが。

感じのいい話

とある休日。久々に外に出かけたらその帰りに電車が止まった。
通勤通学時に電車が止まることも地味にストレスだが、休日に電車が止まるのもそれはそれで当たり前だがストレスで、しかも久々のお出かけで電車が止まると「そんなに普段悪いことばかりしていたかなぁ…」と泣きたい気持ちになる。
そんな泣きたい気持ちを抱えたまま、その悲しみを肴に一人で飲んでいたら、翌日そこで食べた何かが大当たりし、まんまと食あたりになる。
俺が何をしたというのだ。清く正しくイヤらしく生きてきた俺が。
そんなこんなで会社を休んで昼間から寝ていたら、不思議と昔の夢ばかり見た。大体具合の悪い時に見る夢は昔の夢で、そして大体死んでしまった人達が夢の中に出てくる。
病める時は死に近くからなのか、それか俺が本当に死ぬ一歩間際だからそういう夢ばかりみるのか。とはいえ、食あたりだからなぁ。食あたりとてバカにはできないけど、それで死んだらバカだと思われてしまう。ただ、俺は死ぬならバカな死因で死んでこそだと思う。
「あの人、なんで死んだんだっけ?」
「早口言葉」
「え?」
「早口言葉。言おうと思ったら、舌噛み切って」
「んふふふ…」
きっと葬式も笑っていいだか泣いていいんだかよくわからない複雑な空気になるんだと思う。変な死に方したくせに、遺影がやけに爽やかなもんだから、焼香をプッと吹いてしまう人もいるだろう。
葬式といえば高校生の頃、クラスメイトの女の子のお父様が亡くなった。親類の葬式以外の葬式に出るのは初めてで、言っちゃあなんだが「あぁ、人の葬式ってのはこういうものか」くらいにしか思わなかった。
家に帰り、「人は死ぬなぁ」と思いながら寝ていた。ベタだけど丑三つ時に、ふと目が覚めてどこかで嗅いだことのある匂い。
「あぁ、今日の葬式で嗅いだお線香の匂いだ」
時間があったから行ったような不届き者のクラスメイトだったけれど、わざわざお父上はお礼を言いに来てくれたのかぁ…と合掌すると、その匂いがスーッと消えた。少し温かい気持ちになったが、さすがに怖かったので、その日は朝までテレビをつけて寝た。律儀な人は死んでも律儀。
ただ、もしあの晩の人が違う人の幽霊だったら、それはただの怖い話になるけど、今でもなんとなく思い出す亡くなった人の話。
亡くなってからも感じのいい人になりたい。
そんな感じのいい思いを持つ自称感じのいい人の俺が、たまの休日に食べた肴で食あたりになるってんだから、この世には神も仏もいないと思う。マジで。

真と贋

<最近のこと その1>
楽天.png
楽天から“「楽天」を装った不審なメールにご注意ください。”というメールが来た。
非常にややこしい話だ。「楽天」を装ったメールに注意しなくてはならないのに、その送り主が「楽天」…。
意味は分かる。楽天を装ったメールが最近出回っているから、「これはいかん!」と楽天が動いた結果、このメールが来ているのだろうけれど、如何せん、その送り主が楽天なので、何を信じていいのかが全くわからない。
これか。疑心暗鬼というものは。もう少し本物の楽天から来たという確証が欲しい。
“「楽天」を装った不審なメールにご注意ください−本物の楽天より”
不思議だ。“本物の”がついた瞬間に本物感が減った。むしろ、嘘臭さが増えた。
気づかぬうちに現代のラビュリンスに迷い込んでしまったのか。
察するに、本物の楽天が送ってくれているのだろうけれど、いっそ第三者・楽天ならざるものが“「楽天」を装った不審なメールにご注意ください”と教えてくれたらよかったのにと思う。

<最近のこと その2>
駅で外国人に間違えられた。
その日、交通系ICカードを持っておらず、大手町以上新宿未満の乗り換えがややこしい駅で「ええっと…」と路線図を見上げていたら「メっ、メー・アイ・ヘルプ・ユゥ…?」と自信なさげに声をかけてきた。
「ド、ドユワナ・ゴー?」
この善意に負けた。この青年の「外国の人が切符を買えずに困っている。助けなきゃ」そういう善意に負けて、北千住在住の俺は外国人のフリをした。
「Ah…Kita-senju?」
「オッ、オオー!キタセンジュ?」
彼は日本人の俺のために路線図を見ながら小声で「え〜っとアソコで乗り換えて、地下鉄に乗れば…いや、そのままJRでも行けるのか…」と自分の中のナビタイムとお話しながら、ピピピっと券売機のモニターをいじって、あとはお金を入れればチケットが出てくる状態にしてくれた。
「マニー、ヒアー」
知ってる。知ってるけど、今は知らない。なぜなら今、俺は外国人だからだ。たどたどしく、一万円と千円を出しながら「(どっち?どっちを出せばいい?)」という顔する。彼は笑顔で千円札を指差す。お金入れる。お釣りとチケット出る。本物の善意に負けて偽物の外国人にならざるを得なかった俺は笑顔で言う。
「Thank you」
「アハハ。ユア・ウェルカム」
そうして俺は改札を通り、彼と別れた。
予定していた電車を一本乗り過ごした。

<昔のこと その1>
坂本冬美のモノマネをする「坂本冬休み」さんという人と昔一緒にゼネコンの営業に行ったことがある。
あの芸は紛うことなき本物だった。モノマネというある種ニセモノになるという芸の本物の人だった。

<そして今、思うこと>
本物と偽物の境はあやふや。
「本物は本物、偽物は偽物」とパキッと割れるほどお行儀は良くない。そして、お行儀がいいことにあまり価値はなくて、偽物も偽物で意外とそこに実があったりする。